一人暮らしの恐怖の記憶が蘇る

やっとの思いで合格して4月から新生活を始める。そこで一人暮らし先の悲惨な物語を、不思議な体験をしたあとに聞かされる。ないも初めての一人暮らしでこんな事にならなくてもと思う。

深夜に急に眼が覚めた。忘れていた記憶が蘇る。一人暮らしを始めた日と同じ状況。まさかと思っていると、「ずず…ずず…ず…」と引きずるような音が聞こえてきた。あの日と同じようにベッドの真上、頭から足までの距離をゆっくりと移動してるみたい。そろりと身を起こすと、床に布団を敷いて寝ていた友人も起き上がった。豆電球の頼りない光だったが、彼女の訝しげな表情が伺い知れる。「なに、この音…?上って、空き室じゃなかったっけ…」

一人暮らしにこんな事ってあるの?

小さな声で聞いてきた友人に、わからないと首を振った。今も入居者がいないのは確かだが…。空き巣の類だろうか、ならば警察に連絡をと囁くように相談をしていると、物音は進行方向を変え、ベランダのある窓へと移動を始める。引きずるようなそれはベランダに出ると、次の瞬間「ドンッ」と下に落ちた。1階の自分達がいる部屋の窓側へと。二人して恐怖に足が竦んで動けなかった。窓自体は、一人暮らしで日頃から防犯に気を使っていたこともあり、鍵をしっかりとかけていたが、カーテンを閉め忘れてる。

一人暮らしの弱点を思い知る

音はどんどんと近付き、バンッと窓にぶつかった。私達は言葉も発せず、ただ何が来るのか、戦々恐々と見つめていることしか出来ない。こんな時、一人暮らしは本当に不便であった。助けを求めようにも、何処に求めたらいいのか分からない。それは何度か激しくぶつかったが、開けられないと分かったのか、今度は窓を這い上がり始める。不快なガラスの擦れる音が聞こえる。それはもう「ただの音」ではなかった。「得体の知れないもの」だった。

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